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2008年03月号

【世を読む】一体誰のために!? 踊らされている内部統制

傷をなめ合う異常で無常な現場を変えるのは誰だ?
 2008年4月1日以降開始する事業年度より内部統制報告制度が導入されます。3月決算会社の場合、事実上今年の3月には監査を受けることができる段階まで整備が完了していなければならないため、多くの上場企業が準備に追われているところだと思います。

 しかし、いよいよ本格的に内部統制監査が開始するというこの段階になって、内部統制報告制度導入の趣旨と現場の実務感覚との間に大きなギャップが露呈し始めているように感じます。

 日本の制度は、各社のコスト負担も考慮し効率的に内部統制に構築・評価ができるように工夫がされています。しかしながら、一部の大手監査法人は、米国の制度を和訳し、それを現場に押し付けていますので、悲鳴を上げている現場もあるのではないかと思います。制度を作成した学者が「文書類の作成は求めていない」と公に発言しているにも関わらず、監査法人側が非常に高度な文書類作成を要求しているケースも見受けられます。

 金融庁が現場の効率化を求めている一方で、監査法人へ行政処分を下したり、課徴金制度を導入したりという形で、監査法人への監督を強化しているという矛盾も生じています。実際に4大監査法人が行政処分を受けるということが生じてしまったため、大手監査法人はリスクを負うことができなくなりました。結果として、リスクの高いクライアントは解約し、解約された企業が中小監査法人へ流れていくということが起きています。残った既存のクライアントに対しても、内部統制の監査においてリスクを負うことができないため、過剰に保守的な作業を強いることになるのです。

 また、大手監査法人と中小監査法人との間で、内部統制監査のレベルにあまりにも大きな差があるという「二極化」が問題となっています。本来であれば、大手監査法人を解約され中小監査法人へ流れていった企業こそリスクが高いといえるわけですので、こういうリスクの高い会社は厳しい監査を受ける必要があると思います。しかし、中小監査法人の監査は大手の監査に比べると評価の範囲や監査の質に大きな「格差」があるのが実態ではないでしょうか。

 そもそも、なぜ内部統制報告書制度が導入されたのかという制度趣旨をもう一度、金融庁も、監査法人も、企業側も、考えなおすべきです。相次ぐ不正・不祥事から投資家を守ろうという本来の目的がどこかへ泳いで行ってしまい、経営者も外部監査人もラットレースを行っているということはないでしょうか?

 以前、ある上場企業へ行った時の話、内部統制プロジェクト責任者が私に苦笑いしながら言いました。「今、会議室で会計士さんが寝てるよ。昨日、一睡もしてないんだって。」 いやいや、貴方も眼の下にクマが出てますよ…。

2008年03月号

【企業探訪】[6]「内部統制の限界!!? ②」

「なぁ、小林。この間の話どうなった?え~っと、明智さんだったけか?なんかいい話聞けたのか?」

「ん!? あぁ、内部統制の限界の話か~。最近、明智さん、忙しいみたいでなかなか会えないんだよね。今、別々のクライアントの監査をしているし(※1)。」

ここは、実務補習所近くのいつもの居酒屋。実務補習の講義は通常、土曜日の朝から夕方までの長時間に渡って行われる。座り心地がいいとは決して言えない椅子に長時間座り続けさせられた実務補習生は、せっかくの休日を潰された憤りと相まって、憂さ晴らしとばかりに近くの居酒屋で暴飲暴食を繰り返しては、常日頃の仕事への愚痴や不平不満を語り合うのである。

「あれから気になって、自分で色々調べて見たんだけど、実施基準によれば、『経営者が、組織内に適切な全社的又は業務プロセスレベルに係る内部統制を構築していれば、複数の者が当該事実に関与することから、経営者による不当な目的のために内部統制を無視ないし無効ならしめる行為の実行は相当程度困難なものになり、結果として、経営者自らの行動にも相応の抑止的な効果をもたらすことが期待できる。』だってさ。あと、この実施基準や他の市販されている文献を読むと、J-SOX(※2)では、全社的な内部統制の構築を非常に重要視しているんだよね。実務的には、如何に実施基準の42項目の例示をクリアできるかってことだと思うけど。神宮寺はどう思うの?」

「俺か? まぁ、構築できたらいいんだろうけどね。でも、なんせ親分を監視するって話だからさ~、なかなかどうして『しがらみ』があるのが会社ってもんだよ。極端な話、取締役会や監査役会をきちんと機能させるためには、役員総取替えってことも!!?? さらにこの全社的な内部統制ってのは、極論として、組織の在り方やそこで働く人間の問題を扱うわけでしょ。たかだか会計の専門家でしかない俺たち公認会計士に監査や評価ができるのかな~? 例えば、『貴社の取締役会は代表取締役を適切に監督・監視しているとは認められない。したがって、全社的な内部統制が有効に機能しているとは言い難い!!』なんていうわけ? おっ俺にはできんぞ、そんなこと。」

「ん~。それは『内部統制の限界』というよりも『内部統制監査の限界』のような気がするけど・・・。」

内部統制の議論は尽きないようである。

【登場人物】 【登場人物】 小林 (小林新一) ― しあわせ監査法人在籍1年目の新人会計士(補)。 神宮寺(神宮寺幸助)― こころ監査法人在籍1年目の新人会計士(補)。小林とは同期の合格者で、実務補習所では同じ班に所属している。

※1 監査法人での監査業務は、通常、クライアント単位で実施され、複数人によるチームを結成して業務にあたります。また、監査業務自体はクライアント先で行い、直接訪問・直接帰宅が日常的であるため、別々のクライアントの監査に従事している間は顔を合わすことが稀になります。

※2 金融商品取引法に基づく内部統制報告制度の俗称。

2008年02月号

【企業探訪】[5] 「内部統制の限界!!? ①」

ある土曜日の夕暮、小林君は実務補習(※1)の仲間と居酒屋で飲んでいました。 「なぁ、小林、最近お前んところの監査法人はどうだ? 仕事忙しいのか?」
「んー、まぁぼちぼちかな。近頃は内部統制監査の準備が始まってきているからね。社内研修も多くなってきたし。」 「あぁ~、内部統制か~・・・。何なんだろうな、内部統制って。小林はどう思う?」
「・・どう思うって言われてもな~。最近、粉飾決算や不正会計が多発しているだろ。アメリカではエンロンやワールドコム、日本ではカネボウやライブドアか。そうした企業の不正会計から投資家を保護するために導入されたのが内部統制監査なんだってさ。世の中の流れとしては必要なことだと思うよ。」
「ふ~ん。でもさ~、この間、うちの法人のお偉いさんが社内研修で言ってたんだけど、『皆さん、内部統制の限界なるものを知っていますかね。それは、経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることに対しては、内部統制は機能しないという限界です。つまり、経営者不正に対して機能しない内部統制をせっせと社内で構築・評価することによって、現在の内部統制監査制度の導入趣旨である「経営者による不正会計から投資家を保護する」ことを実現させようとしているのです。なんとも矛盾に満ちたことでしょうか。皆さんもぜひこの点について考えてみてください。』だってさ。小林はどう思う?」
小林君の体の中に電撃が走りました!!
「うそ!? ということは、そんな矛盾を孕んだ内部統制で経営者不正を防止しようとしているわけ!!? いや~、そんなことはないでしょ。だって、実施基準(※2)では組織内に適切な全社的な内部統制や業務プロセスに係る内部統制を構築していれば大丈夫みたいなことが書かれているんだから。」
「さぁね。取締役会や監査役会がきちんと機能している会社なら、おいそれと経営者が不正することなんてできそうにないけど、ワンマン社長の会社とか新興企業とかじゃ、けっこう怪しいんじゃないか。まぁ、経営者の鶴の一声で今まで積み上げた職務分掌やら承認活動やらの内部統制がすべて水の泡になるってことでしょ。なんだったら、お前のところの上司、何て言ったっけ。あーそうそう明智さんだ。彼にでも聞いてみたら?」
釈然としないまま、この日の食事は終わったのであった。

【登場人物】 明智(明智龍之介)― しあわせ監査法人在籍8年目の公認会計士。現場では主に主査(いわゆる監査の現場監督者)を担当している。
小林君(小林新一)― しあわせ監査法人在籍1年目の新人会計士(補)。

※1実務補習とは、公認会計士試験合格者に対して、一定の専門知識を習得させるため、日本公認会計士協会が主催する研修制度のことです。公認会計士として登録するためには、公認会計士試験合格後、①業務補助等(監査法人勤務などによる実務経験)を2年以上経験していること、②実務補習により一定の単位を取得し、かつ、終了試験に合格することが必要になります。

※2「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」

2008年01月号

【会計info】 内部統制に関するいくつかの誤解

内部統制に関するいくつかの誤解

来年より本格化する内部統制監査。既に多くの企業が準備に追われていると思います。先日、金融庁企業会計審議会 内部統制部会部会長の八田進二教授が、あるシンポジウムにおいて、「内部統制に関する (実務者側の)いくつかの誤解」として、次の8つの問題点を指摘されていました。

(1)内部統制の4つの目的すべてを達成しなければならない、という誤解

目的は「財務報告の信頼性」の確保。当然のことながら会計まわりの内部統制の整備・運用状況の構築・評価が重要。それにも関わらず、会計の「か」の字も出てこないプロセスの評価を一生懸命やっている、ってことがあるのではないか。

(2)経営者以外の者が評価の主体を代行できる、という誤解

「財務報告の信頼性」の確保が目的。CEO、CFOという立場の方が主体となって取り組むべきだ。

(3)コスト負担を余儀なくされる、という誤解

実施基準は効率的な形で整備が行われていくような工夫がなされている。自分の体は自分が1番知っているわけであるため、第三者(コンサル会社等)へ丸投げするのではなく、経営者が積極的に取り組む必要がある。

(4)すべてのリスクを洗い出し、それに対する統制を講じることが「リスク・アプローチ」である、という誤解

このような誤解を招くような記述がなされている書籍が多いので注意が必要。「にわか内部統制専門家」「エセ内部統制論者」の書いた本が多いが、これらは制度設定者の趣旨とは異なる。

(5)文書化ということの過度の強調

手段が目的化しているのではないか、と思われることがある。

(6)ダイレクト・レポーティングを採用しないことに問題があるという考えの誤解

会計と内部統制の一体的監査、監査役・内部監査人との連携により、監査効率は上がる。

(7)内部統制をいくら強化しても、経営者不正はなくならない、という誤解

「四半世紀も前から、経営者不正を防ぐには内部統制強化が必要だと感じていました」(八田氏)

(8)中小規模の企業には実務上緩和措置が導入される、という誤解

緩和措置はない。中小規模の会社には、中小規模の会社なりのやり方があるはず。



特に(5)が「誤解の最たるもの」であると述べられていました。米SOX法のような「重武装」をしなければならないという誤解が広がっているようです。過度のコスト負担や社内資料のすべての文書化をしなければならないといった誤解がありますが、日本の内部統制監査制度は、米SOX法を和訳したものではなく、「日本独自の制度」として企業の自主性・独自性や、効率性を勘案したものとなっていますので、制度の仕組みをきちんと理解した上で準備を進める必要があります。

内部統制が始まって、企業不祥事が増えていないか?

八田教授の8つの指摘以外に、内部統制コンサルティングを行っている当社としても、次のような問題点を感じています。

(1)四半期報告書制度・決算早期化対策を忘れていないか?

内部統制監査報告書は2008年度第4四半期で公表しますが、四半期報告書制度・決算早期化は2008年度第1四半期から適用されます

(2)会計士以外のコンサルタントへ依存していて大丈夫か?

いわゆる「文書化」作業までは終えても、そこから先のリスク評価、改善作業をコンサルタントが指導・支援できていない、という状況が見受けられます。

(3)内部統制監査対策が始まってから、企業不祥事が急増していないか?

「不祥事の根本問題」がどこにあるのか、再検討すべきではないか。


四半期報告書制度(四半期決算および四半期レビュー)や決算早期化(四半期報告書の45日以内開示)は、内部統制と違い外部コンサルタントへ支援を依頼しても直ぐに成果がでるものではありません。早い会社ではあと半年後に四半期報告書を提出しなければなりませんので、早急の準備が必要となります。
また、企業不祥事が急増している点についても、内部統制監査対策という枠を越えたステークホルダー(消費者、取引先、従業員など)の保護を考えた対策が必要なのではないでしょうか。内部統制には限界があると言われています。内部統制の限界が露呈するのは「人の問題」です。財務報告の信頼性確保だけではなく、あらゆるステークホルダーを保護するために真摯な姿勢で主体的に取り組んでいく「経営者の姿勢」が必要となります。

2007年12月号

【世を読む】 大丈夫か!?続出する企業不祥事

「隠せない」ではなく、「隠さない」ことによる解決が必要だ
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 不正会計や談合事件、食品表示や製造日・賞味期限の偽装、耐震強度・耐火性能の不正・改ざん、金融機関の法令違反行為に対する処分・・・近時の相次ぐ企業不祥事の報道に「いったい、この国はどうなってしまったのだろう?」と思わざるを得ません。
 続出する企業不祥事に対し、矢継ぎ早に法律等の改正が行われました。政府レベルでは、会社法、金融商品取引法、公益通報者保護法、個人情報保護法等、企業レベルでは、コンプライアンス体制の整備、コーポレート・ガバナンスの充実、社会的責任経営(CSR)の推進等、さらには「有価証券報告書」に対する宣誓義務と内部統制監査が導入されます。
 しかし、これらの法律等の改正が行われても、企業不祥事が減るどころか急増しています。
企業不祥事が相次ぐ原因は何でしょうか。第一に、「株式会社とは誰のものなのか」ということですが、「株式会社とは株主のものである」「経営者は利益を上げ、株価を上げればいい」といった、誤った「株主主権」の考え方にあるのではないでしょうか。安全性・信頼性を犠牲にしてでも利益を出せばよいという体質が、一部の企業に染み付いてしまっているのだと思います。第二に、成果主義や終身雇用制度の崩壊による社員の企業に対する忠誠心の低下、人間関係の無秩序化・希薄化も大きな原因だと思われます。近時の不祥事の多くが内部告発によって発覚していることからも分かるように、経営者の「隠しておこう」の意識が、従業員の「隠すな」の圧力へと変わり、企業の「隠せない」へと転換しているのです。組織である以上、不祥事はなくならないでしょう。しかし、法令や規制の改正だけで不祥事はなくなりません。今まで、企業のあり方、人間のあり方を直視することなく、日本的経営の三種の神器をすべて否定して、アメリカの考え方の一部を日本に持ってきたところに大きな問題があったのではないかと思います。今、書店に行けば安岡正篤、渋沢栄一、松下幸之助等の書籍、中国古典に関する書籍が平積みされるようになりました。相次ぐ企業不祥事に対し、多くの経営者が過去の問題点を反省し、あるべき企業観・倫理観を再確認し、日本人のもっている素晴らしい人間観を見直し、企業が社会の主要な構成要素として「いかにあるべきか」を考え直しているということだと思います。
 「隠せない」から「隠さない」へ。今求められていることは、利の元は義、つまり、正しいことを行うことが利益の源泉であることを経営者がもう一度考え直すことではないでしょうか。

2007年11月号

【会計info】決算発表の早期化が求められている!

決算発表の早期化が求められている!

上場企業において、2008年4月1日以降開始する事業年度より内部統制監査だけでなく、四半期決算の義務化や決算発表の早期化も求められます。相次ぐ不正会計事件により投資家をより一層保護する必要性からディスクロージャー(情報開示)の徹底を求めたのです。内部統制監査は情報の信頼性の向上を、四半期決算や決算早期化は情報の適時性の向上を、それぞれ求めたものです。
具体的には、次のように制度が変更されます。

071101.gif(注)但し、決算短信の提出は「30日以内が望ましい」としており、罰則規定はない。
  事業年度末の有価証券報告書の提出は、従来通り3ヶ月以内


決算早期化は、そう簡単にできるものではない!

2006年3月期のデータによると、東証上場企業でも約2割の会社しか決算日後30日以内に決算発表を行っていません。新興市場のジャスダック上場企業に関しては約5%にすぎません。多くの会社が決算発表までに30日を越える日数を要していることが分かります。

071102.gif【出処】取引所公表のデータを元に、リガヤパートナーズが作成


多くの会社では内部統制監査対策を必死でやっていますが、この決算早期化対策を行っている会社を見かけることは余りありません。しかしながら、決算早期化対策の方が実は大変なのではないかと思っています。決算発表を1日早めるだけでも大変なこと。これを10日、20日と縮める必要があるわけですので、決算のやり方そのものを変更しなければならない場合も出てくるでしょう。いくつかのボトルネックを1つ1つ取り除き、決算の仕組みを再構築していくことは1回や2回の決算では出来ないと思います。

決算が遅れる原因は何?

決算発表が遅い会社は、次の3つのうちのいずれか(もしくは全部)のボトルネックがあるように思います。

1.単体決算に時間がかかる

(試算表完成までに時間がかかる)

2.連結決算に時間がかかる

(連結精算表作成に数日を要している)

3.開示に時間がかかる

(決算短信等の作成に時間がかかる)

それぞれのボトルネックに対し解決方法は異なりますので、まずは自社の最大のボトルネックがどこにあるのか見極めてください。
特に連結決算に時間がかかっている会社が多いですが、単体決算と性質が違うものであるため、連結修正仕訳を(1円単位で)貸借一致させる必要もありません。ある程度の正確性を確保しつつ、効率性を高めることがポイントとなります。

【お知らせ】決算早期化でお悩みの方へ
決算早期化を実現させるための「決算早期化チェックリスト」を作成しました。
68個のチェック項目を潰せば、きっと貴社の決算発表も早くなる!!
チェックリストは当社ホームページより無料でダウンロード可能です!
http://www.ligaya.co.jp/useful/index.html

2007年10月号

【会計info】内部統制とは

▽内部統制って、結局なんだ!?
世間では「内部統制」「SOX」と叫ばれ続けております。近年の相次ぐ不正会計事件や不祥事事件をうけて、投資家を保護すべく、上場企業やそのグループ企業において2009年3月期以降から「内部統制監査」が実施されるためです。
しかし、内部統制の本質とは何なのかについて理解されている方は少ないようです。
ある上場企業でこのような不祥事がありました。一営業担当者が単独で会社印鑑を偽造し、顧客へ架空の権利を売却する契約書を作成・締結、代金を現金で回収し、約7千万円を懐に入れていたのです。このような不正・不祥事はどこの会社においても起こりうる典型的な「内部統制の弱点」であり、このような不正・不祥事を起きないよう会社や投資家等を保護していく仕組みを作っていくことが「内部統制の構築」なのです。

▽内部統制=文書化ではない!
「内部統制の構築」というと、業務フローチャートを作成したり、規程やマニュアルを作成したりと、いわゆる「文書化」作業をすることだと思われている方が多く見うけられます。しかし、どれだけ一生懸命「文書化」を行っても、不正・不祥事を減らすことができるわけではありません。例えば、雪印乳業で食中毒事件が発生しましたが、当時雪印には食中毒の対応マニュアルは存在していたようです。しかし、マニュアル通りに役員や管理職レベルの方が対応できなかったことが1万人を超える戦後最大の集団食中毒事件へと発展し、ブランドイメージも信頼も失墜しました。

▽経営者に本当に必要なこと
 97年の山一證券事件を皮切りにこの10年間に信じられない数の会計不正が行われてきた中で、投資家を保護する目的から「内部統制監査」は義務付けられました。しかし、当然のことながら投資家だけを保護すれば良いのではありません。会社は、従業員・顧客・取引先などステークホルダーが存在するから成立するものです。今の経営者に求められていることは、このステークホルダーを保護していく姿勢です。雪印に限らず、不二家、ミートホープ、「白い恋人」の石屋製菓など、経営者は利益を追求するあまり、顧客の喜ぶ笑顔など思い浮かべたことはなかったのでしょう。P.ドラッカーは「経営とは、人を通して正しいことを行うこと」と言っています。形式的なマニュアル作りに追われるのではなく、経営者が正しい倫理的価値観をもつこと、それを役職員にも浸透させることが何よりも重要なのです。