LIGAYA PRESSで“アクチュアリー”タグの付いているブログ記事

2008年01月号

【企業探訪】[4] 「繰延税金資産って一体何?」

「明智さん!! 私、もう、自社の決算書がどうなっているのかよくわからなくなっちゃいました!! 企業会計で決算書を作成すると、こんなことになっちゃうんですか?」
それは株式上場を目指している若き会社社長の嘆きである。上場支援のため、明智と小林君とで会社の決算書を調査し、企業会計原則に基づいた決算書を作成したところ、予算とはあまりにもかけ離れた決算書が出来上がったためである。

「退職給付引当金って何ですか?アクチュアリー(※1)から報告書を取り寄せたのはいいんだけど、何を根拠にこんな金額が出てきているのか全く理解できませんよ!! その他有価証券の評価差額金ってなんですか? 時価評価する意味もよくわからないし、差額が損益でないっていうのは、どういうこと? 繰延税金資産って?? こんな資産、買ってきた覚えないんだけど。これ売れるの? っていうかそもそもこれ何?・・・・」 若き社長の疑問は尽きないようである。

「わかりました、社長さん。では1つ1つ説明していきますね。まず、退職給付引当金ですが、これを理解するためには、退職給付債務というものを理解する必要がありまして・・・・・。」
「んー、よくわかんないなー!! 明智さん、本当に必要なの?その処理。」
明智が1つを説明しては、社長が4つも5つも質問をし、それをまた明智が説明するという押し問答を繰り返し、一通り説明が終わったのときには既に深夜を迎えていた。同席していた小林君もへとへとである。
「明智さん、やばいです。終電が・・・・。」
ひとまずその日の説明は終わりましたが、その後も明智(時々、小林君)と社長の押し問答は際限なく繰り返されたそうです。

さて、最近の決算書ですが、どんな印象をお持ちでしょうか? 十数年前には、まだその存在すら知られてなかった会計処理。それが今や、我が物顔で決算書を牛耳っているではありませんか!! まさに会計処理のジェネレーションギャップ。さらに、これらの会計処理はいずれも複雑さを極めています。
『ちょっとやそっとの知識では、もはや決算書を理解することができない』、そんな状況ではないでしょうか。決算書自体が、それを作成する経営者、そしてまた、それを利用する利害関係者の手を離れ、何か暴走さえしているように思えてきます。
若き社長はこの決算書を理解できる日がくるのでしょうか?

【登場人物】 明智(明智龍之介)― しあわせ監査法人在籍8年目の公認会計士。現場では主に主査(いわゆる監査の現場監督者)を担当している。
小林君(小林新一)― しあわせ監査法人在籍1年目の新人会計士(補)。

※1アクチュアリーとは、確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナルです。このうち、企業年金分野に携わっているアクチュアリー(通称「年金アクチュアリー」)は、適格退職年金等の企業年金の掛金計算や退職給付債務(PBO)の算出等を主な業務としています。