2008年08月号

【経営info】苦境を乗り越える

苦境を乗り越える

どんな会社であっても創業からずっと順風満帆に業績を伸ばし、安定した経営を行うことは容易ではありません。むしろ何らかの苦境を乗り越えた経験を持つ会社の方が、組織として強く揺ぎない社会的地位を確立しているのではないでしょうか。苦境を作り出す要因としては社員、環境、そして経営者自身の三つがあると思います。それらを如何にしてプラスに転じることができるのかを考えてみましょう。

社員によるもの

業績が悪いと真っ先に「うちの社員はダメだ」と考えてしまうのは簡単ですが、その状況を打開することが経営者の役割です。もっと優秀な社員がいればものが売れると安易に思っても、そんな優秀な社員が業績の悪い会社に来てくれるはずはないのです。社員の能力を責める前に、戦略・商品・市場を今一度、分析・検証することをしなければ組織は成長しません。目の前の社員ととことん向き合う中で、ほんの一握りでも「一生この会社で働こう」と、意を決する人物とめぐり合うことが出来るのではないでしょうか。そしてそのような社員こそが会社の将来を左右するかけがえのない存在になるのです。

環境によるもの

人間の力は時として無力だと感じることがあります。まるで天災のように、どうしようもない現実によって会社や生活が一変してしまうことが、いつ何時我が身に起こるか分かりません。絶望感に打ちひしがれそうになると人間は物事をとてもシンプルに考えるようになれる生き物です。「どうしようもない」という思いから、「今すべきことはなにか」「何のためにするのか」という答えを導こうとします。つまり、すべてがゼロになった時に自分の本質と最も重要なことが明確になるのです。ビジネスの成功事例の多くが、どん底の状態から芽吹く内容であるのはそんな理由があるのではないかと思います。すべてが上手くいっている時には見落としがちなチャンスやヒントに出会える絶好の機会だと考えれば良いのです。

自分によるもの

会社の成長とともに、経営判断をするトップには計り知れない重責がのしかかってきます。人間ですから間違えてしまうこと、正しい判断ができなくなることはあります。「自分は絶対に成功する!」という思いが強いばかりに苦境に立たされると動きが取れなくなってしまうことがあります。地位や名誉とともに人は謙遜さを忘れてしまいます。周りの声に耳を傾けるゆとりと、「自分は間違えた」と素直に認める勇気があれば苦境は必ず乗り越えられるのです。傲慢で高飛車な人には誰も力添えをしようとは思いません。自分の弱さを知り、謙虚な姿勢を持った人物には自然と人が集まり新しい知恵、力を与えてくれるものです。

当たり前のことですが、以下の三つを忘れないことは経営の基本だと言えるのです。

「人を責めるのではなく、真摯に向き合うこと」
「最悪の状況は、考えるチャンスと思うこと」
「自分の間違いを素直に認める勇気をもつこと」

どんな悪い状態も次は良くなるという自然の摂理はビジネスの世界でも同じなのです。

2008年07月号

【経営info】7月号お休み

本誌特別企画により【経営info】はお休みです。

2008年06月号

【経営info】Think Big!!

経営者が物事をどのように考えるかで、会社の業績、成長は大きく変わってきます。表題の「Think Big」という言葉は、「物事を大きく考えろ」という意味ですが、この短い言葉には経営者にとって不可欠な意味が込められているのです。

自分のものさしで考えない

我々は自分自身の人生経験に基づいてあらゆる判断をしています。例えば、平均的なサラリーマン家庭で生まれ育った人には同じような金銭感覚がありますよね。ランチが1000円以上だと高いと感じたり、居酒屋のビールが一杯400円だと安いと感じたりするのは、自分自身の収入や生活レベルの中でやりくりすることで身に付くからなのです。
会社が何らかの商品やサービスを提供する場合に、価格設定は非常に重要な要素になります。市場を十分に調査しても、どこか自分の常識や感覚が介入してしまうリスクは常にあるのです。ザ・リッツ・カールトン・ホテルが10万円のオムレツという企画を成功させることが出来たのも、自分のものさしではなくお客様の視点で立案したからに違いありません。

限界を作らない

100万円の1%は1万円で、5%は5万円なのは誰でも分かる話です。営業会議で利益率について協議すると、必ずこの数%について議論がぶつかり合います。「コストを下げれば6%になる」「値引きをすれば2%減だ」といった言葉を耳にすることは珍しくありません。ところが100万円を1億円にするという発言はなかなか出てこないのです。うちの会社は100万円売るのがやっとだから如何にして利益を残すかを考えるのが当然だ、という考え方では会社がそれ以上に成長するはずがありあません。5%の利益しかなくても1億売れば、500万の利益なのです。現状を真摯に捉えコストを考える事は必要なことであっても、ビジネスのボリュームそのものを大きくするという基本から離れてしまっては良い結果は望めないのです。全打席ヒットを打つという心構えの打者でも、4割は打てないのです。最初から2割5分打てれば良いと思っていたら二軍落ちするのは当たり前なのです。

あり得ないことを考える

平成7年頃、阪神大震災の前後に私ははじめて携帯電話を持つようになりました。ようやく小型化されたものの費用は7、8万円かかったのを憶えています。10年後に小学生でも携帯電話を持つ日がやってきて、携帯電話でショッピングしたり、音楽を聴けたりする時代がくるとは到底想像することは出来ませんでした。もちろん、その業界の人達は10、20年先を見据えて研究・開発されていたとは思いますが、人々が「そんなことって可能なの?」と思うようなことが時代を牽引しているのも事実なのです。「自分の会社では無理だ」と決めるのは簡単ですが、その思いが会社のすべての可能性を否定し、発展することを妨げてしまうのです。経営者たるもの社員から「社長はとんでもないことを考えているぞ」と思われるくらいの夢を持っておかなければなりません。

2008年05月号

【経営info】管理職に求められる部下の管理

言い切ることの大切さ

「部下を叱れば、辞めてしまうかも知れない・・・」、「自分が上司に責められるから注意しなければ・・・」こんな思いにかられた事はありませんか?
今回は、部下を育てるポイントについて考えてみましょう。

部下を育てるためには、その人物についてよく理解しておく事が必要です。その人物に興味を持たずして、有効なコミュニケーションが図れるはずがないのです。ある社員が残業をしないという話を聞いて、「君は何故みんなが頑張っているのに、さっさと帰ってしまうんだ!」という叱り方をする人がいます。ところが、よくよく話を聞くと、家族に要介護の高齢者が同居しているためにやむを得ず帰宅しているということだってありえます。表面的な情報だけで、部下を注意することはとても危険なことなのです。「最近、家で何かあったの?」と声をかけてあげられれば、そんな状況を相談してくれたかも知れません。< br>

問題を溜めない

「もう我慢の限界だ!!あいつに注意しなければ!」と意気込んで部下を叱ったら、まるで話が通じないということがあります。これは、部下が悪意を持ってミスを犯しているわけではないことの表れなのです。つまり、当の本人はタイムリーな注意、警告を受けなければ、それが問題であることすらわからないのです。何度も注意すると嫌がられるのではと思い問題を先送りにしてしまっては、決して本人のためにはならないということです。「これぐらい気付けよ・・・」と影で嘆く前に、一声かけて注意を促すということも管理職にとっては重要な業務です。「前から気になっていたんだけど・・・」「一度言おうと思っていたのだが・・・」という言葉は、相手に不快感を与えるだけなのです。

本気で付き合う

人の心を動かすには自分自身が本気でその人物と向き合う覚悟が必要です。ノウハウ本から得た知識やテクニックで人を動かせることは滅多にありません。自己流であっても、荒削りであっても、部下に対して熱くならなければなりません。野球の日本代表星野監督は理想の上司として何年も注目されています。彼のリーダーとしてのスタイルは闘争心を全面に出して、時には鉄拳をふるうほど熱いものです。「俺について来い!」「責任は俺が取る!」と語り、部下と本気で向き合う姿勢に本当の意味での愛情を感じるから、多くの人が彼に惹かれるのです。最近は、波風を立てずに何事も穏便に事を進めるという傾向が強くなっています。それでも人は、人の情熱や愛情を求めていることに何ら変わりはないのです。

2008年04月号

【経営info】定番商品にみる会社の強み

グリコのポッキー

1966年に発売されたPockyは、プリッツにチョコをコーティングした新しいお菓子として40年以上も販売されています。誰もが一度は食した経験のあるこのお菓子は、チョコ菓子なのに手を汚さないという画期的なデザインで、国内外で幅広く類似する商品が販売されるほどの影響力を持っています。「ポッキン」という擬音からネーミングされたPockyは年間300億円以上を売り上げるグリコの主力商品へと成長しました。TVCMに山口百恵、松田聖子などその時代を代表するアイドルを起用することで常に新鮮さを失わない広告宣伝も商品力を後押ししました。2006年には新垣結衣を起用し、彼女自身も一躍トップアイドルへと成長しました。いちごポッキー、ムースポッキーなど関連商品の開発・発売に伴って、音楽・芸能業界ともリンクさせることで、グリコはこの商品を定番商品へと引き上げたといえるのです。

日清のカップヌードル

今や世界的な知名度と消費量を誇るインスタント食品の代名詞、カップヌードルは1971年に発売されました。「100億食」という人類の数を超える販売実績もそのきっかけは、1972年の「あさま山荘事件」で機動隊員が食べている姿が全国に生放送されたことによります。その後、定期的に様々な味のカップヌードルが販売され、消費者を飽きさせない展開を図っていきました。初めて同商品のTVCMソングを歌ったのは浜田省吾でしたが、その後映像にこだわったCMを制作し、常に時代の先端を走っている印象を与えてきました。開発面に関しても、70年代は珍しかったフリーズドライの具剤を使用するなど、時代を先取りしていました。また、世界中でその国に合った味付けをしているのも、この商品の強さ、つまりは、日清食品の強さの理由となっています。私がアメリカで発売されているカップヌードル「Cup O' Noodle」を食べたときは、その味の違いに驚いたものです。

大塚製薬のポカリスエット

1980年に発売された大塚製薬のポカリスエットは、その後、ソフトドリンク業界に多大な影響を与えました。大塚製薬は医療用の点滴などを作っていた会社であったため、ポカリスエットの発売に対し、世論は賛否両論だったのを記憶しています。「缶ジュースは甘い」という既成概念をもつ多くの消費者にとって、ポカリスエットの味に抵抗があったのも事実です。ところが、従来の糖分を多量に含んだジュースではのどの渇きはなかなか取れないのに対して、ポカリスエットは全く新しい満足感を与えました。発売前の開発コンセプトは「飲む点滴」だったのですが、今でも風邪をひいた家族、知人にポカリスエットをすすめた経験がある方も多いのではないでしょうか? 吸収されやすいスポーツドリンクという概念を超え、国内で全く新しい飲料水の分野を築いた功績ははかり知れません。「スエット」=「汗」という意味ですので、英語圏では類似商品のゲータレードの方が人気や知名度が高いようですが、大塚製薬にとっては会社の強みを明確に表した商品だといえるでしょう。

Pocky、カップヌードル、ポカリスエット、それぞれの会社の強みを明確に打ち出したことにより、どれもが今やほとんどのスーパー、コンビニで購入出来る定番商品へと成長しました。会社にとっての強みは、他社に負けない商品・サービスを有しているかにかかっています。「これだけは負けない」という何かを持つことが、従業員のモチベーションを上げ、会社を成長させる原動力となるのです。
皆様の会社においても、「絶対的価値」を作り上げることが安定した経営には欠かせない要素なのです。

2008年03月号

【経営info】言い切ることの大切さ

言い切ることの大切さ

時代に名を残す経営者に共通していることのひとつに、何かを決断したら迷わずそれをストレートに社員に伝える強い信念を持っているということが言えます。

経営者は会社の責任者であると同時に全社員のリーダーなのです。もしもあなたが探検隊に属していて、隊長が「ここからどっちへ行けば良いのかわからない」と発言したらどのように感じるでしょうか?中には、弱気になった隊長に、自分なりの意見を言ってアドバイスする人もいるかも知れませんが、ほとんどの人は「この隊長について行くのは不安だ」と感じるものです。

安心させること

建設機械メーカー「コマツ」の坂根正弘会長は就任した2002年に800億円以上もの赤字を記録したものの、翌年には早くも黒字化し、3年連続最高益を更新しただけでなく、2007年には純利益1646億円と見事にV字回復を果たしたのは有名な話です。坂根会長がバブル期の多角経営によって危機的状況にあった「コマツ」をこれほどまでに復活させた要因のひとつが「有言実行」ではないでしょうか。まず、社員に対して「この会社は大丈夫である」と断言し、「二年で結果を出す」という明確な期限を設けたことが社員の不安を取り除き、エネルギーになったことは間違いありません。また問題ばかりを指摘し、それを改善するのではなく自社の強みを徹底して磨き、ライバル会社の追従を許さないという姿勢は開発スタッフにとってもやりがいのある環境が整ったことは言うまでもありません。

言葉の力

大リーガー、イチロー選手の言葉にも言い切ることの大切さはよく出てきます。彼は少年の頃に、「将来プロ野球選手になりたい」と言うのではなく、「将来はプロ野球選手になる」と断言していたそうです。「なりたい」と「なる」では結果が大きく変わってくるのです。単なる願望ではなく、断言することでそれは決意となるのです。経営者が社員に対して自分の願望を伝えても、「社長はそうなれば良いと思っているんだ」と感じさせてしまいます。よく「オブラートに包んだような表現」というのを耳にしますが、経営者が社員に対する余計な気遣い、思いやりによって真意を伝えられない状況に陥る危険性を孕んでいることを忘れないで下さい。

あきらめない姿勢

多くの成功者や尊敬される経営者に共通していることは決してあきらめないことです。何度失敗しようと、成功するために必要な過程であると言い切るのは容易なことではありませんが、トップがその姿勢を持ち続けることによって社員は次の行動を移す決断が出来るのです。社員の失敗を責め、改善を求めるという悪循環によって倒産してしまった会社は数え切れません。一方、どんなに困難な状況にあっても前を向き努力を続けた企業だけが一流と呼ばれているのです。イー・モバイルの千本倖生CEOはベンチャーとしてスタートした会社が数十億円もの資金不足に陥った際にも、最後まであきらめずに渡米し直談判の末、投資を得ることに成功しました。一度は投資会社から見送られていた案件にもかかわらず、彼の熱意と行動力によって会社は危機的状況から脱することが出来たのです。「99.9%ダメでも0.1%にかけなければならない」という彼の姿勢は、まさに実行され成功を収めたわけです。是非とも社長の信じていることをストレートに社員にぶつけてみて下さい。

2008年02月号

【経営info】 経営者に求められる“資金管理”

会社の血液である資金を管理するということは経理部門に任せておく仕事ではありません。 今回は、経営者が陥りやすい三つの問題について考えてみましょう。

1.「売上しか見ない」

会社が営業活動を行う中で最もわかりやすい成果判断のひとつは売上です。売上目標を立てて各営業マンは壁に貼られた棒グラフを少しでも伸ばす努力にすべての力を注ぎこむという姿はいまだに多くの会社で見受けられます。当然のことですが、この商品を売ればいくら儲かるという計算(利益率)は事業がスタートする時点で十分に考慮しているはずです。ところが数か月、数年と経過していくといつの間にか当初考えていた以上の費用が発生していることがあるのです。
例えば広告宣伝費はその典型です。売上が思うように伸びないので、思い切って広告を出そうと決断してしまうような場合です。この費用は売上が伸びないからその打開策のひとつとして使われるお金ですよね。つまり、最初の利益率は簡単に崩れ去っているのです。もちろん「広告宣伝費は原価ではない」と指摘される方もおられますが、「会社のお金をいくらその事業にかけるか」という意味で、売上を立てるための費用としては同じなのです。

2.「決算書を活用しない」

会社の業績を数字にあらわしたものが決算書ですが、それを活用することで会社の状態は驚くほど見えてきます。決算書作成は税理士さん任せで、面倒くさい作業だと思われている経営者の方は要注意です。前述した「売上しか見ない」ことによって目に付かなかった問題がはっきりと分かるものが決算書なのです。「上場企業だから四半期決算が必要」とか、「大企業だから月次決算が出来なければならない」と判断するのは大きな間違いです。決算書は外部に見せる以前に自分自身の会社がどのような状態であるかを知るもっとも重要なものなのです。小さなお店でも今月の売上、仕入価格、人件費ぐらいは常に把握しています。会社が大きくなり、人が増え、部署が増え、役割分担が明確になればなるほど数字そのものをしっかりと見る人がいなくなってしまうのです。経理部門の方も日々の仕訳や伝票発行などを正確に行うことは出来ても、会社の財務状況がどうなっているかを知ること経営者自身の重要な仕事なのです。新しい戦略を立てる際に、決算書すら目を通さないのならば、それは、計画も立てずに旅行に出かけるのと同じことなのです。

3.「不測の事態に備えていない」

運転資金の融資相談を受けて感じるのは、なぜこの状態になるまで放置していたのだろうかということです。ビジネスは失敗することばかりを考えていては良い結果は望めませんが、予定通りに事業が進まなかった場合に備えておくことも重要です。具体的にいえば、取引銀行への定期的な報告もそのひとつです。会社を設立する際、資金が不足した場合しか銀行を訪れないという経営者は、窮地に立たされた際に好意的な支援を受けることは困難になります。そのような経営者に限って、慌てて銀行提出用の試算表を作ろうとします。その場しのぎの財務諸表は借入をすることを目的として作成されてしまうので、会社の真の姿はごまかされてしまいます。経営者は、ポジティブな姿勢を持ちながらも、不測の事態に対応するために一歩先を常に考えておくことが求められるのです。運転資金がショートするという事態を支払い期日が目前に迫ってから認識するような会社に対して、銀行が融資しようと思うはずがないのです。

目先の事業の成功ももちろん重要ですが、会社全体としてどのようにお金が使われているかを中長期的に管理しておく体制を持っておくことが、資金ショートという最大のリスクを回避する基本ではないでしょうか。常に自分の会社を客観的に見る視点がなければ安定した経営は望めないのです。