2008年07月号

【世を読む】「taspo(タスポ)」の導入、真の目的は何だ!?

未成年者の喫煙防止を目的に段階的に導入されてきた成人識別ICカード
「taspo(タスポ)」が7月1日、首都圏や沖縄県などの1都8県で導入され、ほぼ全国のたばこの自動販売機で同日からタスポを利用しなければ購入できなくなりました。「未成年者の喫煙防止のため」といいますが、実際には自販機以外でもたばこは買えてしまいます。対面販売の場合は「タスポ」を提示する必要はありませんので、未成年者でもコンビニに行けば普通にたばこを購入できるのです。なぜ、このような無意味な政策を行わなければならなかったのでしょうか。
未成年者以外の喫煙者の間でも「タスポ」の普及率が2~3割と非常に低迷していると報じられています。某社のアンケートによると、タスポを持たない理由としては、「自動販売機以外で買えばよいと思うから」が最も多く、次点以下は「申し込みが面倒だから」「カードを持ち歩くのが面倒だから」と、わずらわしさを強調したものが続いていました。おそらく、今後「タスポ」の普及率が上昇することは期待できないでしょう。
日本フランチャイズチェーン協会は6月20日、主要コンビ21社の5月の既存店売上高が、前年同月比3.7%増の6006億円と、3カ月ぶりの増加と発表しました。自動販売機でのたばこ購入者がコンビニに流れたことが売上増につながったようです。
これにより大打撃を受けたのは、町のたばこ店です。「タスポ」導入により自販機からのたばこ売上げが激減し、たばこ店の廃業も相次いでいるようです。生き残りをかけるために、「タスポ」を自販機に吊り下げたり、顧客に貸し出したりという苦肉の策に出ているところもあるようです。
先日、アメリカへ行った時にコンビニでたばこを買いました。どうみても未成年には見えない私に身分証明書の提示を求められました。どこのコンビニでも同じでした。日本もこういった努力を先ずすべきではないでしょうか。
「未成年者の喫煙防止のため」という目的は理解できますが、莫大な設備投資を行いながらも制度が有名無実化し、代理店たる町のたばこ屋さんの首をしめています。これほどまでに非科学的な政策があったでしょうか。「タスポ」は社団法人日本たばこ協会など3つの団体が運営しているようです。天下りや何らかの利権がからんでいるような気がしてなりません。

【世を読む】秋葉原の無差別殺傷事件はなぜ起こったのか?

秋葉原の無差別殺傷事件はなぜ起こったのか?
 私の幼少期、恵まれた家庭に育つ同級生A君が近所に住んでいました。地元の有名な私立小学校へ通い、成績も優秀、近所の人たちの評判もよく、誰もが一目置く存在でした。その後、有名私立中学校へ進学し、さらに有名高校進学を目指していました。しかし、中学校を卒業した頃から、A君は豹変しました。茶髪にパーマ、タバコ、ピアス、バイク、暴力…、「ここまで人間は変わるものなのか」と驚く程に。高校に通っているかどうかも分からず、数年間非行・不良を行っていましたが、それ以降すっかり姿を見せなくなりました。
 今から思えば、裕福な家庭に育ったA君でしたが、両親と出かけたり、会話をしたりする姿を一度も見たことはありませんでした。いつも孤独でした。私立学校に通いながらも、夜は進学塾へ通っていたA君は、「勉強しなさい」としか言われず、寂しい思いをしてきたのかもしれません。「誰かに相手にしてほしい」、そんな思いが彼を非行に走らせたのではないかと思います。
 前月8日の、17人が死傷した東京・秋葉原の無差別殺傷事件。逮捕された25歳の犯人は犯行直前まで携帯電話の掲示板サイトで「実況中継」をしていました。事件の数ヶ月前から掲示板に数百件の投稿をしていたようです。逮捕後の事情聴取で犯人は「誰かに相手にしてほしかった」「誰かに犯行を止めてほしかった」というような供述をしていたようです。
 彼の行動は許されざることです。しかし、なぜ彼はこんな過去に類をみない大惨事を引き起こさなければならなかったのでしょうか。中学の頃までは優等生で近所の評判も良かった加害者。私はA君のことを思い出しました。全く同じではないか、と。案の定、加害者の家族との会話はほとんどなく、自宅では自室に引きこもる生活をしていたようです。そして追い討ちをかけるように両親の別居。加害者は孤独だったのです。ネットでしか存在を示すことができなかったのです。
 誰かに認められたい、誰にも相談できない、頼る人がいない…といった孤独感が家庭でも職場でも様々な破壊的行動を引き起こしており、現代社会の抱える大きな問題となっているのではないかと思います。あなたの目の前にいる人に対し、ほんの少しの思いやりや優しさで接する心の余裕を持つことにより、状況は変わっていくのではないでしょうか。
お亡くなりになった方々の御冥福と被害に遭われた方々の一日も早い御回復をお祈りします。

2008年06月号

【世を読む】「社会の公器」たる企業が果たす使命と責任とは?

船場吉兆の食べ残し使い回し問題に思う、企業の存在意義とは
 消費・賞味期限のラベルを付け替えや、原材料表示の偽装を組織的に行っていた高級料亭「船場吉兆」。全4店舗は休業に追い込まれ、資金繰りが悪化、2008年1月に民事再生法の適用を申請したことは記憶に新しいと思います。
 その後、一部店舗で営業を再開したものの、今度は食べ残しの使い回しが発覚。前社長が「もったいない。利用できるものは利用しろ」と数年前より指示していたといいます。同社の役員は「営業再開後は使い回しはしていない」と取材に応じていましたが、そんな言葉は信用できません。
 ラベルを付け替え発覚後、口止めするために従業員を事実上軟禁していたというニュースが流れました、記者会見でも嘘をついて国民をだまし続けました。役員が引責辞任した後の新社長には前社長の妻が就任しました。従業員を全員解雇するというニュースも流れました(その後撤回)。こういう報道を見たときに、「この会社が社会的信用を取り戻すことはあり得ないだろう」と感じましたが、案の定、底なしの背信行為に老舗吉兆の信用は地に落ちました。
 「社会の公器」たる企業は、顧客、社員やその家族、下請企業、株主、地域社会などの利害関係者に対して使命や責任を果たすために活動するものです。船場吉兆の場合はどうでしょうか。利益を最優先する体質、一人数万円も支払う顧客に対する愚弄、身内重視の経営、あまりにも低い経営者のモラル……、法律はもとより、社会のルールも守ることができず、企業を完全に私物化した公私混同経営を行っており、社会のために存在する意義すら失っているとしか思えません。
 「事業の基は徳なり」「利の基は義なり」という中国古典の言葉があります。経営者は、この2つの言葉を憶えておいて欲しいと思います。徳のない事業は結局壊れていくことになります。利益の源泉は「義」、すなわち正しいことを行うことによって後から付いてくるものです。利益を得るために顧客や社員の信頼を失うようなことをやっていたら、仮に一時的にうまくいっても長続きはしないでしょう。自分の家族・子供にいえないようなことはやらないことです。近年相次ぐ不正や不祥事に共通するものは、「徳」のない経営者が、「信」「義」「仁」といったものを考えていないことに因るといってもよいのではないでしょうか。 それにしても、この船場吉兆のニュースを見たときに、目の玉が飛び出るような勘定の料理を食べ残す人がそんなにいるものか……という別の驚きもありました。提供者側も商売の常識を忘れていますが、数万円の食事に手を付けずに下げてくれという顧客の心理も世界的にみて非常識だと思いますけどね。

2008年05月号

【世を読む】新リース会計基準で営業利益増大の効果

固定資産が膨らむが、意外な効果も。予算策定時にはご留意を!
 2008年4月1日以降開始する事業年度より、リース取引に関する会計基準が抜本的に変わります。我が国の大半の上場企業は、これまでリースで調達した機械等の資産を売買処理(貸借対照表に資産計上)せず、賃貸借処理(簿外処理)してきましたが、これからはリース物件を原則として売買処理しなければなりません。(注1)
 ①賃貸借処理の場合、損益計算書には「リース料」を営業費用として計上することになります。一方で、②売買処理の場合、リース資産に対する「減価償却費」が営業費用として計上され、リース債務に係る「支払利息」が営業外費用として計上されることになります。
①賃貸借処理の場合、リース会社に支払うリース料は毎年定額であるため、損益計算書上の「リース料」も毎期定額が計上されます。しかし、②売買処理の場合、減価償却費は多くの会社では定率法を採用していますので、「リース料」に比べ、「減価償却費」は費用処理のピッチが速くなります。
 NTTデータは、2007年9月中間決算において新リース会計基準を前倒しで適用しました。リース資産221億円を貸借対照表に追加計上すると同時に、損益計算書に特別損失188億円を計上しました。この188億円が、上述の「リース料」と「減価償却費」との費用処理のピッチの差となります。逆にいえば、新リース会計基準適用により、特別損失に計上した額だけ、リース期間における営業利益が押し上げられる効果があることになります。NTTデータの場合、2008年3月期に20億円強の営業増益効果があり、この効果を今後数年にわたって享受することになります。
 このように、新リース会計基準適用により特別損失が発生するものの、営業利益を押し上げるという意外な効果もあります。予算や中長期計画策定の際には十分に留意してください。

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(注1) 但し、非上場企業(上場企業の子会社等を除く。)の場合は、従来通り、リース物件を賃貸借処理することができます。
【参考文献】「日経ヴェリタス」2008年4月6日号

2008年04月号

【世を読む】会計の「2008年問題」をどう乗り切る!?

やるべきことは内部統制だけではない!
 2008年の会計のビッグイベントといえば「内部統制報告制度」(いわゆる"SOX法")の導入であり、既に多くの会社で準備が行われていると思います。
しかし、2008年はこれ以外にも非常に多くの新制度導入が予定されており、会計界では「2008年問題」ともいわれています。
 例えば、3月決算の会社の場合、この2008年3月期決算において新たに適用される会計基準だけでも10個以上もあります(主なものは"会計information"を参照)。また、2009年3月期以降に適用される会計基準もほぼ同じ数だけあります(詳細は前号の"会計information"を参照)。中には会計システムの変更を余儀なくされたり、連結子会社や関連会社にも影響を及ぼしたりするものがありますので、2008年度はそれらの事前準備だけでも相当大変なのではないかと思います。
この「2008年問題」の中でも、経営者や実務担当者の方にとって重要なものは次の4つです。

1.内部統制報告制度 2.確認書制度
3.四半期決算の導入 4.決算早期化

 特に、「3.四半期決算の導入」(原則、年度の財務諸表と同じ会計処理で四半期決算を行い、監査法人等によるレビューを受ける)や、「4.決算早期化」(四半期報告書の決算日後45日以内の提出)については、まだ十分な対策がなされていない会社が多いと思われます。
 ところが、3月決算の場合、「内部統制報告書」の作成・開示は2009年3月期ですが、四半期決算・決算早期化は第1四半期決算期である2008年6月期から適用されます。あと3か月しか猶予はありません。決算の速報版である「決算短信」ですら45日以内に開示できていない会社が多い中、この6月期より監査法人等のレビューを受けた「四半期報告書」を45日以内に開示しなければならないのです。
 多くの新会計基準が適用される中、決算発表を早期化させるということは、外部専門家に依拠しても必ずしも達成できるものではない点においても、内部統制対策よりも大変な作業ではないかと思います。内部統制対策ばかり頑張りすぎて、決算発表が遅延するという恥ずかしいことにならないように、事前の計画的な対策が求められます。

2008年03月号

【世を読む】一体誰のために!? 踊らされている内部統制

傷をなめ合う異常で無常な現場を変えるのは誰だ?
 2008年4月1日以降開始する事業年度より内部統制報告制度が導入されます。3月決算会社の場合、事実上今年の3月には監査を受けることができる段階まで整備が完了していなければならないため、多くの上場企業が準備に追われているところだと思います。

 しかし、いよいよ本格的に内部統制監査が開始するというこの段階になって、内部統制報告制度導入の趣旨と現場の実務感覚との間に大きなギャップが露呈し始めているように感じます。

 日本の制度は、各社のコスト負担も考慮し効率的に内部統制に構築・評価ができるように工夫がされています。しかしながら、一部の大手監査法人は、米国の制度を和訳し、それを現場に押し付けていますので、悲鳴を上げている現場もあるのではないかと思います。制度を作成した学者が「文書類の作成は求めていない」と公に発言しているにも関わらず、監査法人側が非常に高度な文書類作成を要求しているケースも見受けられます。

 金融庁が現場の効率化を求めている一方で、監査法人へ行政処分を下したり、課徴金制度を導入したりという形で、監査法人への監督を強化しているという矛盾も生じています。実際に4大監査法人が行政処分を受けるということが生じてしまったため、大手監査法人はリスクを負うことができなくなりました。結果として、リスクの高いクライアントは解約し、解約された企業が中小監査法人へ流れていくということが起きています。残った既存のクライアントに対しても、内部統制の監査においてリスクを負うことができないため、過剰に保守的な作業を強いることになるのです。

 また、大手監査法人と中小監査法人との間で、内部統制監査のレベルにあまりにも大きな差があるという「二極化」が問題となっています。本来であれば、大手監査法人を解約され中小監査法人へ流れていった企業こそリスクが高いといえるわけですので、こういうリスクの高い会社は厳しい監査を受ける必要があると思います。しかし、中小監査法人の監査は大手の監査に比べると評価の範囲や監査の質に大きな「格差」があるのが実態ではないでしょうか。

 そもそも、なぜ内部統制報告書制度が導入されたのかという制度趣旨をもう一度、金融庁も、監査法人も、企業側も、考えなおすべきです。相次ぐ不正・不祥事から投資家を守ろうという本来の目的がどこかへ泳いで行ってしまい、経営者も外部監査人もラットレースを行っているということはないでしょうか?

 以前、ある上場企業へ行った時の話、内部統制プロジェクト責任者が私に苦笑いしながら言いました。「今、会議室で会計士さんが寝てるよ。昨日、一睡もしてないんだって。」 いやいや、貴方も眼の下にクマが出てますよ…。

2008年02月号

【世を読む】 2007年の株式新規公開市場を振り返る

大量新規公開時代は終わったのか!?
2007年に株式を新規公開した企業は121社でした。8月に新市場「NEO」が創設され、2007年中に3社が上場したものの、全体では2006年の181社上場に比べると3分の2となりました。証券会社・取引所の上場審査や監査法人の会計監査が厳格になっていることが影響していると思われます。企業不祥事や不正会計が相次いでいますので、審査・監査の厳格化は今後も続くと思われます。日経が市場関係者等に行ったアンケートによると、2008年の新規公開が2007年により減少すると予想している人が約6割、100社を割ると予想している人も約2割にのぼりました(日本経済新聞 平成20年1月4日より)。

grf.gif 公開時の調達額も、平均で14億円と前年より半減しました。半数近い企業(60社)が5億円未満の資金調達であり、資金調達を行わなかった企業(公募増資なし)が4社ありました。
また、初値が公募価格を下回る、いわゆる「公募価格割れ」の銘柄が29社(24.0%)もありました。「公募価格PER」(公募価格÷1株あたり利益)は平均18.2倍と、前年の32.2倍から大幅に低下し、「公募価格PER」が20倍未満の企業が88社(72.7%)となりました。投資家の「IPO銘柄ブーム」は完全に消滅したように思われます。
さらに、注目すべきは2007年に新規公開した企業の社長の中に、20歳代の社長がいなかったことです(2006年は3社)。60歳代が39社(32.2%)と最も多く、平均は52歳でした。一時期のように若手ベンチャー社長が脚光を浴びることがなくなってきました。
2008年は、内部統制の義務付け、経営者確認書制度の導入、四半期決算の本格導入、決算早期化の実施、「XBRL」(“key礎word”参照)の導入等、既存の上場企業にとっても大変な一年となることが予想されます。新規公開を見合わせる企業も出てきていると思われる中、ここ数年間続いてきた大量新規公開時代は転換期を迎えたといえるのではないでしょうか。
(注:文章中のデータはQUICKデータを参考にしました。)