2008年07月号

【世を読む】秋葉原の無差別殺傷事件はなぜ起こったのか?

秋葉原の無差別殺傷事件はなぜ起こったのか?
 私の幼少期、恵まれた家庭に育つ同級生A君が近所に住んでいました。地元の有名な私立小学校へ通い、成績も優秀、近所の人たちの評判もよく、誰もが一目置く存在でした。その後、有名私立中学校へ進学し、さらに有名高校進学を目指していました。しかし、中学校を卒業した頃から、A君は豹変しました。茶髪にパーマ、タバコ、ピアス、バイク、暴力…、「ここまで人間は変わるものなのか」と驚く程に。高校に通っているかどうかも分からず、数年間非行・不良を行っていましたが、それ以降すっかり姿を見せなくなりました。
 今から思えば、裕福な家庭に育ったA君でしたが、両親と出かけたり、会話をしたりする姿を一度も見たことはありませんでした。いつも孤独でした。私立学校に通いながらも、夜は進学塾へ通っていたA君は、「勉強しなさい」としか言われず、寂しい思いをしてきたのかもしれません。「誰かに相手にしてほしい」、そんな思いが彼を非行に走らせたのではないかと思います。
 前月8日の、17人が死傷した東京・秋葉原の無差別殺傷事件。逮捕された25歳の犯人は犯行直前まで携帯電話の掲示板サイトで「実況中継」をしていました。事件の数ヶ月前から掲示板に数百件の投稿をしていたようです。逮捕後の事情聴取で犯人は「誰かに相手にしてほしかった」「誰かに犯行を止めてほしかった」というような供述をしていたようです。
 彼の行動は許されざることです。しかし、なぜ彼はこんな過去に類をみない大惨事を引き起こさなければならなかったのでしょうか。中学の頃までは優等生で近所の評判も良かった加害者。私はA君のことを思い出しました。全く同じではないか、と。案の定、加害者の家族との会話はほとんどなく、自宅では自室に引きこもる生活をしていたようです。そして追い討ちをかけるように両親の別居。加害者は孤独だったのです。ネットでしか存在を示すことができなかったのです。
 誰かに認められたい、誰にも相談できない、頼る人がいない…といった孤独感が家庭でも職場でも様々な破壊的行動を引き起こしており、現代社会の抱える大きな問題となっているのではないかと思います。あなたの目の前にいる人に対し、ほんの少しの思いやりや優しさで接する心の余裕を持つことにより、状況は変わっていくのではないでしょうか。
お亡くなりになった方々の御冥福と被害に遭われた方々の一日も早い御回復をお祈りします。

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