2008年06月号

【会計info】 会計士はなぜ4年で辞めるのか?

会計士はなぜ4年で辞めるのか?

城繁幸氏のベストセラー『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)によると、最近の若者の3人に1人は新入社員として入社した会社を3年以内に辞めるようです。このデータには大変驚かされた方も多いと思います。しかし、私(武田)が勤務していた監査法人では、3年で辞めた者はいなかったものの、4年で辞めた者は同じ部署の同期11名中9名(82%)。当時の制度では、3年のインターンを経て、最短で入社4年目に公認会計士登録ができたことに因ります。では、なぜ会計士は4年で監査法人を辞めるのでしょうか?
 平成20年4月、日本公認会計士協会近畿会が会員の会計士へ行った『「勤務実態及び監査業務への意識」に関するアンケート結果』を公表しました。この結果発表は非常に興味深いものでした。

監査実務の実情

業務の繁忙期における平均的な1日の勤務時間は、10時間以上と答えた人が84.7%(うち、12時間以上と答えた人も49.2%)。繁忙期に休日出勤すると答えた人は84.4%。4月や10月の繁忙期においては、休日もなく、毎日残業という会計士が多いものと推測されます。私自身も繁忙期は、自宅から電車で30分程の場所にあるクライアント本社の近くにあるビジネスホテルで1週間宿泊したことがありました(チェックインは毎日午前3時以降でした)。
 仕事量と給与水準との見合いについては、「やや見合っていない」「全く見合っていない」と答えた人が全体の49.1%。ちなみに、監査法人では若くして管理職(マネージャー等)になる人が多いことから、残業代が支給されないという人が全体の54%。給与面だけみても、仕事に対するモチベーションを維持することが難しいのではないかと思われます。
 但し、繁忙期が忙しいことや、仕事量と給与水準との見合いについては、今も昔も大差はなく、会計士が監査法人を辞める大きな原因とはいえないでしょう。問題は、次の質問に対する回答ではないかと思います。「監査業務を行う中での不満足要因は何ですか」という質問に対する回答に、ここ数年の監査実務における特徴が大きく表れています。

「形式的な(調書)書類作成が多すぎる」と回答した人が78.1%、「間接業務が多い」と回答した人が63.7%、「時間に余裕がない」と回答した人が56.5%、「こなす作業が多く、時間がない」と回答した人が47.4%、と多忙過密な実情に異を唱える回答が続きますが、特に上位2つの回答を見る限り、前向きではない仕事に対して不満をもっている会計士が余りにも多いということが分かります。これは、近年、提携先の国際会計事務所が定めた様式による調書作成を求められたり、調書の電子化が進んだり、レビューが厳格化していることなどが重なり、従来からは考えられない監査調書の量と質が求められていることによります。調書を作成するためだけに休日出勤するという会計士も多いのではないかと思います。このような状況では、当然のことながら仕事に対する「やりがい」は低減することになります。「やりがい」の低下が若手会計士の現場離れの原因の一つになっていると推測されます。

監査のやりがいを取り戻せ!

会計士が監査に対する「やりがい」を失っていることは健全な証券市場の発展を考えると切実な問題として考えなければなりません。「監査業務を行う中で、公認会計士としてやりがいを感じることは何か」という質問に対する回答で、最も多かったのは「クライアントからの信頼に答えた満足感」(59.1%)でした。どんなに忙しくても、残業代が少なくても、クラアントの信頼に応えるということは監査人にとって最も嬉しいことです。
しかし、証券市場における不正や不祥事が続出したことによる業界の信頼回復に向けた一連のアクションが、監査の形式化・形骸化、監査リスクの高い業務への過剰な消極的姿勢、それに伴うクライアントへの指導的機能の抑制等につながり、会計士のやりがい低下を招いているともいえるでしょう。「人不足」を解決するために会計士試験の合格者を倍増させましたが、これでは根本的な問題解決になりません。社会のニーズに即した質の高い監査が実施されるよう、1から監査環境を整備し直さなければならない時にきているのではないでしょうか。

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