2008年04月号

【世を読む】会計の「2008年問題」をどう乗り切る!?

やるべきことは内部統制だけではない!
 2008年の会計のビッグイベントといえば「内部統制報告制度」(いわゆる"SOX法")の導入であり、既に多くの会社で準備が行われていると思います。
しかし、2008年はこれ以外にも非常に多くの新制度導入が予定されており、会計界では「2008年問題」ともいわれています。
 例えば、3月決算の会社の場合、この2008年3月期決算において新たに適用される会計基準だけでも10個以上もあります(主なものは"会計information"を参照)。また、2009年3月期以降に適用される会計基準もほぼ同じ数だけあります(詳細は前号の"会計information"を参照)。中には会計システムの変更を余儀なくされたり、連結子会社や関連会社にも影響を及ぼしたりするものがありますので、2008年度はそれらの事前準備だけでも相当大変なのではないかと思います。
この「2008年問題」の中でも、経営者や実務担当者の方にとって重要なものは次の4つです。

1.内部統制報告制度 2.確認書制度
3.四半期決算の導入 4.決算早期化

 特に、「3.四半期決算の導入」(原則、年度の財務諸表と同じ会計処理で四半期決算を行い、監査法人等によるレビューを受ける)や、「4.決算早期化」(四半期報告書の決算日後45日以内の提出)については、まだ十分な対策がなされていない会社が多いと思われます。
 ところが、3月決算の場合、「内部統制報告書」の作成・開示は2009年3月期ですが、四半期決算・決算早期化は第1四半期決算期である2008年6月期から適用されます。あと3か月しか猶予はありません。決算の速報版である「決算短信」ですら45日以内に開示できていない会社が多い中、この6月期より監査法人等のレビューを受けた「四半期報告書」を45日以内に開示しなければならないのです。
 多くの新会計基準が適用される中、決算発表を早期化させるということは、外部専門家に依拠しても必ずしも達成できるものではない点においても、内部統制対策よりも大変な作業ではないかと思います。内部統制対策ばかり頑張りすぎて、決算発表が遅延するという恥ずかしいことにならないように、事前の計画的な対策が求められます。

【リガヤの視点】Vol.7「箸(はし) よく盥(かん)水(すい)を回す」

イエローハット創業者で、トイレ掃除の伝道師でも有名な鍵山秀三郎氏が、古人・先人が語った「心に宿る言葉」をまとめた『人間を磨く言葉』(PHP研究所)という文庫本の中に、「箸 よく盥水を回す」という言葉が紹介されています。
「盥」とは「たらい」ともよみます。つまり「盥水」とは盥(たらい)の中の水のことです。箸一本で盥水を回しても、箸しか回りません。ところが、その箸を根気よく熱心に回し続けていると、周囲の水が少しずつ回るようになります。さらに、諦めずに回し続けると、一段と輪が広がります。
我々は何事も箸一本で盥水を回し始めて直ぐに諦めてしまいがちです。大きな波を起こすには、根気よく熱心に行う努力が必要だということを、この言葉は教えてくれます。
鍵山氏も掃除を続けて三十数年。誰でも出来る小さなことでも、「10年偉大なり、20年畏るべし、30年歴史に残る。」との自身の言葉の通り、こつこつと続けることにより歴史となりました。「こつこつと続けること、益はないが、意味はある」(鍵山氏)。続ければ本物になるのです。

【会計info】 続・会計基準のキャッチアップを!

続・会計基準のキャッチアップを!

前号では「平成20年4月1日以降に適用される新会計基準」の概要をまとめましたが、今回は「平成20年3月期から適用される新会計基準」(平成19年4月1日以降に適用される新会計基準)をまとめました。決算の際に、漏れがないかのチェックリストとしてご活用下さい。

平成20年3月月期より適用される新会計基準

強制適用される基準

1.ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第17号)
2.退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い(改正実務対応報告第2号)
3.「退職給付に係る会計基準」の一部改定(その2)(企業会計基準第14号)
4.一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針(企業会計基準適用指針第15号)
5.払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(企業会計基準適用指針第17号)
6.金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)、同適用指針、同Q&A
7.信託の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第23号)
8.租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労金等に関する監査上の取扱い
9.減価償却に関する当面の監査上の取扱い(監査・保証実務委員会報告第81号)
10.連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書に作成に関する実務指針(会計制度委員会報告第8号)


早期適用可能な基準

1.棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)
2.排出権取引の会計処理に関する当面の取扱い(改正実務対応報告第15号)
3.リース取引に関する会計基準(企業会計基準第13号)
4.連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(実務対応報告第18号
5.関連当事者の開示に関する会計基準(企業会計基準第11号)
6.企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(改正企業会計基準適用指針第10号)



この中でも、特に多くの会社に影響を与えそうなのは『減価償却に関する当面の監査上の取扱い』です。平成19年度税制改正において償却可能限度額および残存価額が廃止されたことにより、減価償却方法を変更する場合における取扱いや、既存資産の残存簿価の処理方法などの取扱いが明示されています。

また、『租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労金等に関する監査上の取扱い』も重要です。役員退職慰労金について、一定の要件を満たすものは引当金設定が必須となりました。

ソフトウェアの制作・販売を行っている会社は、『ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い』も重要となります。収益認識時点と表示についての取扱いが明示されています。


なお、会計の最新情報は、当社配信ブログ『CFOのための最新情報』にも適時掲載しておりますので、こちらも是非ご覧下さい。

【経営info】定番商品にみる会社の強み

グリコのポッキー

1966年に発売されたPockyは、プリッツにチョコをコーティングした新しいお菓子として40年以上も販売されています。誰もが一度は食した経験のあるこのお菓子は、チョコ菓子なのに手を汚さないという画期的なデザインで、国内外で幅広く類似する商品が販売されるほどの影響力を持っています。「ポッキン」という擬音からネーミングされたPockyは年間300億円以上を売り上げるグリコの主力商品へと成長しました。TVCMに山口百恵、松田聖子などその時代を代表するアイドルを起用することで常に新鮮さを失わない広告宣伝も商品力を後押ししました。2006年には新垣結衣を起用し、彼女自身も一躍トップアイドルへと成長しました。いちごポッキー、ムースポッキーなど関連商品の開発・発売に伴って、音楽・芸能業界ともリンクさせることで、グリコはこの商品を定番商品へと引き上げたといえるのです。

日清のカップヌードル

今や世界的な知名度と消費量を誇るインスタント食品の代名詞、カップヌードルは1971年に発売されました。「100億食」という人類の数を超える販売実績もそのきっかけは、1972年の「あさま山荘事件」で機動隊員が食べている姿が全国に生放送されたことによります。その後、定期的に様々な味のカップヌードルが販売され、消費者を飽きさせない展開を図っていきました。初めて同商品のTVCMソングを歌ったのは浜田省吾でしたが、その後映像にこだわったCMを制作し、常に時代の先端を走っている印象を与えてきました。開発面に関しても、70年代は珍しかったフリーズドライの具剤を使用するなど、時代を先取りしていました。また、世界中でその国に合った味付けをしているのも、この商品の強さ、つまりは、日清食品の強さの理由となっています。私がアメリカで発売されているカップヌードル「Cup O' Noodle」を食べたときは、その味の違いに驚いたものです。

大塚製薬のポカリスエット

1980年に発売された大塚製薬のポカリスエットは、その後、ソフトドリンク業界に多大な影響を与えました。大塚製薬は医療用の点滴などを作っていた会社であったため、ポカリスエットの発売に対し、世論は賛否両論だったのを記憶しています。「缶ジュースは甘い」という既成概念をもつ多くの消費者にとって、ポカリスエットの味に抵抗があったのも事実です。ところが、従来の糖分を多量に含んだジュースではのどの渇きはなかなか取れないのに対して、ポカリスエットは全く新しい満足感を与えました。発売前の開発コンセプトは「飲む点滴」だったのですが、今でも風邪をひいた家族、知人にポカリスエットをすすめた経験がある方も多いのではないでしょうか? 吸収されやすいスポーツドリンクという概念を超え、国内で全く新しい飲料水の分野を築いた功績ははかり知れません。「スエット」=「汗」という意味ですので、英語圏では類似商品のゲータレードの方が人気や知名度が高いようですが、大塚製薬にとっては会社の強みを明確に表した商品だといえるでしょう。

Pocky、カップヌードル、ポカリスエット、それぞれの会社の強みを明確に打ち出したことにより、どれもが今やほとんどのスーパー、コンビニで購入出来る定番商品へと成長しました。会社にとっての強みは、他社に負けない商品・サービスを有しているかにかかっています。「これだけは負けない」という何かを持つことが、従業員のモチベーションを上げ、会社を成長させる原動力となるのです。
皆様の会社においても、「絶対的価値」を作り上げることが安定した経営には欠かせない要素なのです。

【今月の1冊】 「論語力」


今月の1冊 論語力
『論語力』
北京師範大学教授 于丹(ユーダン)
1,000円(税込)/講談社

「論語」をこれほどまでに分かりやすく説明した本があったでしょうか。
中国でなんと7億人が視聴した人気TV番組での于丹教授の論語講和が書籍化され、日本語でも発売されました(中国では1000万部以上売れたようです)。「論語」のエッセンスを非常にシンプルに説明しており、中国古典初心者の方でも楽しく読める内容です。繰り返し読む価値のある一冊です!

今月の1枚
DVD
『紳竜の研究』
島田紳助、松本竜介
6,090円(税込)/R and C Ltd.

1980年代にメディアを席巻した「紳竜」の漫才映像や軌跡などの貴重映像を収めたDVD(2枚組)。昨年NSC(吉本総合芸能学院)でただ一度だけ開催された島田紳助による特別限定授業は必見。「そこまで喋ってもいいの?」という、TVでは絶対に聞くことができない天才島田紳助の成功哲学がここに。この特別授業は、M1を目指す人だけでなく、経営者の方にも是非見てほしい!

【Key礎Word】 確認書制度

これだけは知っておきたい基礎ビジネス用語辞典
確認書制度

会社代表者が有価証券報告書等の記載内容について適正であることを確認し、確認書を当報告書に添付しなければならない制度。金融商品取引法に規定され(法24の4の2等)、2008年4月1日以後に開始する事業年度から提出しなければならない。投資家保護を図るためのディスクロージャー(情報開示)制度の改革の一環として制度導入された。
旧証券取引法の確認書は、平成20年3月31日までに提出される有価証券報告書に添付することはできるが、平成20年3月31日に終了する事業年度に係る有価証券報告書については、当該確認書を添付することはできないので注意が必要である。

【企業探訪】[7]「適用間近!! 改正リース会計基準」

「明智君、久しぶり!! 最近見かけなかったけど、元気にしてた?」
監査法人事務所で作業をしていた明智に声を掛けたのは、同期の今井京子である。
「あぁ、今井か~。そう言えば久しぶりだね。そっちこそ元気にしているの?」
「そうね~。・・・。そうだ!! ちょっと相談があるんだけど、今、時間いい?」
「・・・なんかイヤな予感がする。」
「まあ、そう言わずに。リース会計のことなんだけどね。来年度から改正リース会計基準が適用(※1)されるじゃない。明智君の担当しているクライアントでは準備が進んでいるのかな~、なんて話なんだけど。」
「ん~、その話か~。オレが担当している会社は大丈夫!! と言いたいところだけど、ちょっと大変な会社があるんだよね。会社の設備がほとんどリースだし、工場、支店もたくさんあるからね。この間、経理部長との話の中でちょうどリース会計の話題が出たんだけど、『実物管理が全くできていません!! わはははは~。』なんて打ち明けられちゃったよ。ダメ出ししておいたけど。」
「そうなんだ~・・・。どこも悩むところは同じなのね。実は、私の行っているクライアントも実物管理が全くできていないのよ!! 契約書をベースに早急に棚卸をして下さいとは伝えたんだけど、その契約書の管理もできていない状態。もうっ、イヤになっちゃうわ!! 近々リース会社と打ち合わせて対策を練るらしいんだけど・・・・大丈夫かしら。」
「契約書管理か~。それも重要だよね~。それから、今回の改正で、所有権移転外ファイナンスリース取引について、賃貸借処理が基本的に認められなくなったでしょ。これからは、原則、売買処理をしていかなきゃいけないから(※2)、現在価値基準でリース取引を判定したり、リース料総額から利息相当額を控除したり、利息相当額は利息法によって毎期計上していかなければならないし・・・。はぁ~、今、考えただけでもうんざりしてくるね。」

「あっ、今井さんだ! お久しぶりですっ!! 」
「あら!! 小林君じゃないの。どう、がんばっている? 明智君にいじめられたらいつでも相談にいらっしゃい。」
「はっ、はいっ!! 明智さんには常にいじめられていますので、すぐに相談に行きます!!!」
「おい、おい。オレはいじめてないぞ。」
小林君の興味は改正リース会計基準よりも別のところにあるようである。

【登場人物】
明智(明智龍之介)― しあわせ監査法人在籍8年目の公認会計士。現場では主に主査(いわゆる監査の現場監督者)を担当している。
今井(今井 京子)― しあわせ監査法人在籍8年目の公認会計士。明智とは公認会計士試験の受験時代からの知り合いで、同期にあたる。
小林 (小林新一) ― しあわせ監査法人在籍1年目の新人会計士(補)。

※1 平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用。

※2 従来のリース会計基準では、所有権移転外ファイナンスリース取引について、一定事項の注記をすることを条件に、賃貸借処理を認めていました。改正リース会計基準では、一定の条件を満たす所有権移転外ファイナンスリース取引のみ、賃貸借処理が認められることになりましたので、この条件を満たさない所有権移転外ファイナンスリース取引は売買処理を行わなければならなくなります。