2008年02月号

【世を読む】 2007年の株式新規公開市場を振り返る

大量新規公開時代は終わったのか!?
2007年に株式を新規公開した企業は121社でした。8月に新市場「NEO」が創設され、2007年中に3社が上場したものの、全体では2006年の181社上場に比べると3分の2となりました。証券会社・取引所の上場審査や監査法人の会計監査が厳格になっていることが影響していると思われます。企業不祥事や不正会計が相次いでいますので、審査・監査の厳格化は今後も続くと思われます。日経が市場関係者等に行ったアンケートによると、2008年の新規公開が2007年により減少すると予想している人が約6割、100社を割ると予想している人も約2割にのぼりました(日本経済新聞 平成20年1月4日より)。

grf.gif 公開時の調達額も、平均で14億円と前年より半減しました。半数近い企業(60社)が5億円未満の資金調達であり、資金調達を行わなかった企業(公募増資なし)が4社ありました。
また、初値が公募価格を下回る、いわゆる「公募価格割れ」の銘柄が29社(24.0%)もありました。「公募価格PER」(公募価格÷1株あたり利益)は平均18.2倍と、前年の32.2倍から大幅に低下し、「公募価格PER」が20倍未満の企業が88社(72.7%)となりました。投資家の「IPO銘柄ブーム」は完全に消滅したように思われます。
さらに、注目すべきは2007年に新規公開した企業の社長の中に、20歳代の社長がいなかったことです(2006年は3社)。60歳代が39社(32.2%)と最も多く、平均は52歳でした。一時期のように若手ベンチャー社長が脚光を浴びることがなくなってきました。
2008年は、内部統制の義務付け、経営者確認書制度の導入、四半期決算の本格導入、決算早期化の実施、「XBRL」(“key礎word”参照)の導入等、既存の上場企業にとっても大変な一年となることが予想されます。新規公開を見合わせる企業も出てきていると思われる中、ここ数年間続いてきた大量新規公開時代は転換期を迎えたといえるのではないでしょうか。
(注:文章中のデータはQUICKデータを参考にしました。)

【リガヤの視点】Vol.5「対象を愛して没頭している人にはかなわない」

先日イチロー選手が出演しているテレビ番組を見て感銘を受けました。多くのプロ野球選手が年明けから自主トレを始める中、イチロー選手は前シーズン終了から5日休んだだけで「体がおかしくなって、これはヤバいと思って・・・」と、11月から誰もいないスタジアムで黙々と一人練習をしていたのです。
『ウェブ進化論』(ちくま新書)で有名な梅田望夫さんが、ある雑誌の対談で、昔の環境に比べると時間も場所も関係なく仕事に没入できるようになったのであるから、「対象を愛して没頭している人にはかなわない」時代になった、と言っていました。イチロー選手は、まさに「対象を愛して没頭している人」であり、ほとんどの大リーガーでさえもイチロー選手の実力には「かなわない」わけです。
我々ビジネスパーソンも、ITが進化した現代社会において、専門知識を詰め込んだ「プロフェッショナル」という枠を超えた「職人」を目指さなければ勝ち残れない時代になったのではないかと思います。まずは、目の前の対象を愛し、没頭して、「好き」を貫く必要があるのではないでしょうか。

【会計info】 平成20年度税制改正大綱発表!

平成20年度税制改正大綱発表!

昨年12月13日に自民党から平成20年度税制改正大綱が発表されました。税制改正大綱の主な内容は次の通りです。

▼企業に影響しそうなもの

●製造設備(主に機械・装置)の法定耐用年数の抜本的見直し
●中小企業の後継者の事業承継税制の拡充
●「法人事業税」の一部を分離し、「地方法人特別税」「地方法人特別譲与税」を創設
●研究開発税制の拡充
●情報基盤強化税制の拡充
●エンジェル税制の大幅拡充
●工事収益の計上方法等の見直し
●中小企業投資促進税制の適用期限を2年延長
●交際費等損金不算入制度の、中小企業者に係る400万円定額控除の適用期限を2年延長
●使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例の適用を2年延長
●欠損金繰り戻し還付不適用制度の、中小企業者の設立後5年間に生じた欠損金額に係る適用除外措置の2年延長
●中小企業者等の少額減価償却資産の取得価格の損金算入特例の2年延長
●固定資産税において、「償却資産の評価額<理論帳簿価額」の場合に、理論帳簿価額を償却資産の価格とする制度の廃止

▼個人に影響しそうなもの

●株式譲渡損益と配当所得の損益通算の実現と軽減税率(平成20年末まで10%、本則20%)の存廃。但し、平成21年、22年は年間500万円以下の譲渡益及び100万円以下の配当については軽減税率10%を適用。
●「ふるさと納税」導入
●住宅の省エネ改修促進税制(固定資産税の減税)
●「200年住宅」(長期耐用住宅)に係る課税の特例の創設(固定資産税、不動産取得税の軽減)
●生活習慣病への対応や医療機関の分娩施設に係る課税の特例
●自動車税のグリーン化の2年延長

▼その他

●農商工連携等促進税制の創設
●道路特定財源の暫定税率維持(特例措置10年延長)
●公益社団・財団法人の非課税枠拡大
●寄付金税制見直し
●トン数標準税制

▼2009年以降に見送った項目・今後の検討項目

●消費税率引き上げ
●相続税の総合的見直し
●所得控除の抜本見直し
●環境税導入
●自動車関連諸税の簡素化
●生命保険料控除の拡充
●介護費用に係る税制措置
●納税者番号制度
●上場株式等の譲渡損失と配当との間の損益通算(平成21年度)
●取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度の創設(平成21年度)



この中で、特に注意が必要なのは、「製造設備(主に機械・装置)の法定耐用年数の抜本的見直し」です。現在390区分されている耐用年数区分が55区分にまとめられます。米国では48区分、韓国では26区分ですので、区分を簡素化するとともに、時代遅れとなった法定耐用年数を見直すように経団連などが指摘をしていました。
当見直しは、平成20年4月1日以後開始する事業年度より適用される予定ですので、経営者の方、経理担当者の方は十分にご注意下さい。

なお、今回の「税制改正大綱」は、税制通のベテラン議員が集まる「自民党税制調査会」において決定されたものですが、税金は国会で決めなければならないものですので、今後の国会審議動向により内容が変更することがあります。
(情報は、平成20年1月20日時点)
出処:自民党「平成20年度税制改正大綱」を元にリガヤパートナーズがまとめました。

【経営info】 経営者に求められる“資金管理”

会社の血液である資金を管理するということは経理部門に任せておく仕事ではありません。 今回は、経営者が陥りやすい三つの問題について考えてみましょう。

1.「売上しか見ない」

会社が営業活動を行う中で最もわかりやすい成果判断のひとつは売上です。売上目標を立てて各営業マンは壁に貼られた棒グラフを少しでも伸ばす努力にすべての力を注ぎこむという姿はいまだに多くの会社で見受けられます。当然のことですが、この商品を売ればいくら儲かるという計算(利益率)は事業がスタートする時点で十分に考慮しているはずです。ところが数か月、数年と経過していくといつの間にか当初考えていた以上の費用が発生していることがあるのです。
例えば広告宣伝費はその典型です。売上が思うように伸びないので、思い切って広告を出そうと決断してしまうような場合です。この費用は売上が伸びないからその打開策のひとつとして使われるお金ですよね。つまり、最初の利益率は簡単に崩れ去っているのです。もちろん「広告宣伝費は原価ではない」と指摘される方もおられますが、「会社のお金をいくらその事業にかけるか」という意味で、売上を立てるための費用としては同じなのです。

2.「決算書を活用しない」

会社の業績を数字にあらわしたものが決算書ですが、それを活用することで会社の状態は驚くほど見えてきます。決算書作成は税理士さん任せで、面倒くさい作業だと思われている経営者の方は要注意です。前述した「売上しか見ない」ことによって目に付かなかった問題がはっきりと分かるものが決算書なのです。「上場企業だから四半期決算が必要」とか、「大企業だから月次決算が出来なければならない」と判断するのは大きな間違いです。決算書は外部に見せる以前に自分自身の会社がどのような状態であるかを知るもっとも重要なものなのです。小さなお店でも今月の売上、仕入価格、人件費ぐらいは常に把握しています。会社が大きくなり、人が増え、部署が増え、役割分担が明確になればなるほど数字そのものをしっかりと見る人がいなくなってしまうのです。経理部門の方も日々の仕訳や伝票発行などを正確に行うことは出来ても、会社の財務状況がどうなっているかを知ること経営者自身の重要な仕事なのです。新しい戦略を立てる際に、決算書すら目を通さないのならば、それは、計画も立てずに旅行に出かけるのと同じことなのです。

3.「不測の事態に備えていない」

運転資金の融資相談を受けて感じるのは、なぜこの状態になるまで放置していたのだろうかということです。ビジネスは失敗することばかりを考えていては良い結果は望めませんが、予定通りに事業が進まなかった場合に備えておくことも重要です。具体的にいえば、取引銀行への定期的な報告もそのひとつです。会社を設立する際、資金が不足した場合しか銀行を訪れないという経営者は、窮地に立たされた際に好意的な支援を受けることは困難になります。そのような経営者に限って、慌てて銀行提出用の試算表を作ろうとします。その場しのぎの財務諸表は借入をすることを目的として作成されてしまうので、会社の真の姿はごまかされてしまいます。経営者は、ポジティブな姿勢を持ちながらも、不測の事態に対応するために一歩先を常に考えておくことが求められるのです。運転資金がショートするという事態を支払い期日が目前に迫ってから認識するような会社に対して、銀行が融資しようと思うはずがないのです。

目先の事業の成功ももちろん重要ですが、会社全体としてどのようにお金が使われているかを中長期的に管理しておく体制を持っておくことが、資金ショートという最大のリスクを回避する基本ではないでしょうか。常に自分の会社を客観的に見る視点がなければ安定した経営は望めないのです。

【今月の1冊】 「仕事は味方」


今月の1冊 book0802.jpg
『仕事は味方』
浜口隆則
1,260円(税込)/かんき出版

仕事は嫌なもの? 何かを犠牲にしなければ「幸せ」になれない? そういう思い込みは捨てよう! 仕事とは、喜ばれること。給料とは、喜ばれた事に対する報酬。人生の目的は、人を幸せにすること。
ビジネス書だけど絵本のように読めてしまう本書だが、人生とは? 仕事とは? 会社とは? 自分らしさとは? 幸せとは? を考えさせられるおすすめ度の高い一冊。ベストセラー『戦わない経営』の著者が贈る待望の第二作!

■2007年1月~12月 武田のおすすめ本ランキング

人生論
1位 『何のために働くのか』 北尾吉孝著/致知出版社
2位 『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』 稲盛和夫著/日経BP社
3位 『思いをカタチに変えよ!』 渡邉美樹著/PHP研究所 

経営・ビジネス
1位 『もう、国には頼らない。経営力が社会を変える!』 渡邉美樹著/日経BP社
2位 『[新装版]成功の法則』 江口克彦著/PHP研究所
  3位 『成功のコンセプト』 三木谷浩史著/幻冬舎
4位 『佐藤可士和の超整理術』 佐藤可士和著/日本経済新聞出版社
5位 『会社コンプライアンス―内部統制の条件』 伊藤真著/講談社現代新書

【Key礎Word】 XBRL

これだけは知っておきたい基礎ビジネス用語辞典
XBRL

XBRL(Extensible Business Reporting Language)は、財務情報を効率的に作成・流通・利用できるよう、国際的に標準化されたコンピュータ言語。今後上場企業の有価証券報告書作成時に用いられる。
XBRLにより財務データが開示されることによってデータをシステムや表計算ソフトにそのまま取り込むことが可能となるため、データ再入力・転記・加工などの時間が大幅に節約できる。また、特別のシステムを組むことなく汎用ソフトウエアを用いることにより過年度比較や他社比較が容易にできることや英文で表示することが可能となる。また、国際会計基準とリンクすることにより、外国会社と内国会社の比較が容易にできることも期待されている。

【企業探訪】[5] 「内部統制の限界!!? ①」

ある土曜日の夕暮、小林君は実務補習(※1)の仲間と居酒屋で飲んでいました。 「なぁ、小林、最近お前んところの監査法人はどうだ? 仕事忙しいのか?」
「んー、まぁぼちぼちかな。近頃は内部統制監査の準備が始まってきているからね。社内研修も多くなってきたし。」 「あぁ~、内部統制か~・・・。何なんだろうな、内部統制って。小林はどう思う?」
「・・どう思うって言われてもな~。最近、粉飾決算や不正会計が多発しているだろ。アメリカではエンロンやワールドコム、日本ではカネボウやライブドアか。そうした企業の不正会計から投資家を保護するために導入されたのが内部統制監査なんだってさ。世の中の流れとしては必要なことだと思うよ。」
「ふ~ん。でもさ~、この間、うちの法人のお偉いさんが社内研修で言ってたんだけど、『皆さん、内部統制の限界なるものを知っていますかね。それは、経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることに対しては、内部統制は機能しないという限界です。つまり、経営者不正に対して機能しない内部統制をせっせと社内で構築・評価することによって、現在の内部統制監査制度の導入趣旨である「経営者による不正会計から投資家を保護する」ことを実現させようとしているのです。なんとも矛盾に満ちたことでしょうか。皆さんもぜひこの点について考えてみてください。』だってさ。小林はどう思う?」
小林君の体の中に電撃が走りました!!
「うそ!? ということは、そんな矛盾を孕んだ内部統制で経営者不正を防止しようとしているわけ!!? いや~、そんなことはないでしょ。だって、実施基準(※2)では組織内に適切な全社的な内部統制や業務プロセスに係る内部統制を構築していれば大丈夫みたいなことが書かれているんだから。」
「さぁね。取締役会や監査役会がきちんと機能している会社なら、おいそれと経営者が不正することなんてできそうにないけど、ワンマン社長の会社とか新興企業とかじゃ、けっこう怪しいんじゃないか。まぁ、経営者の鶴の一声で今まで積み上げた職務分掌やら承認活動やらの内部統制がすべて水の泡になるってことでしょ。なんだったら、お前のところの上司、何て言ったっけ。あーそうそう明智さんだ。彼にでも聞いてみたら?」
釈然としないまま、この日の食事は終わったのであった。

【登場人物】 明智(明智龍之介)― しあわせ監査法人在籍8年目の公認会計士。現場では主に主査(いわゆる監査の現場監督者)を担当している。
小林君(小林新一)― しあわせ監査法人在籍1年目の新人会計士(補)。

※1実務補習とは、公認会計士試験合格者に対して、一定の専門知識を習得させるため、日本公認会計士協会が主催する研修制度のことです。公認会計士として登録するためには、公認会計士試験合格後、①業務補助等(監査法人勤務などによる実務経験)を2年以上経験していること、②実務補習により一定の単位を取得し、かつ、終了試験に合格することが必要になります。

※2「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」